フリーランス必見！初心者でも簡単にできる帳簿のつけ方ガイド

そもそも帳簿とは？

帳簿とは、事業でやり取りしたお金の動きや取引の内容を記録する台帳です。具体的には、実際に取引などを行った金額のほか、年月日や勘定科目（取引の内容）なども書きます。

フリーランスは原則として毎年春先に確定申告を行うのが義務です。確定申告では帳簿類に記録した収入や経費をもとに税額を決めます。日頃から帳簿類をきちんと記録することで、確定申告の手続きやお金の動きの把握が可能です。

帳簿の主な種類を紹介！

フリーランス活動に欠かせない帳簿類には、大きく分けて主要簿と補助簿があります。

主要簿

まず主要簿とは、日常的に発生する取引の金額や内容を記すための帳簿です。主要簿には日々の全ての取引を記す仕訳帳と、取引内容を勘定科目別にまとめた総勘定元帳があります。

ちなみに主要簿に分類される2種類の帳簿は、複式簿記（後述）の青色申告で確定申告を行う場合は不可欠です。会計ソフトを使えば日々の売上や経費を入力するだけで仕訳帳が自動作成されるとともに、総勘定元帳にも自動で転記されます。

補助簿

続いて補助簿とは、主要簿の内容を詳しく保存・照会する際に役立つ帳簿です。文字に示すように、主要簿を補足する意味で作られます。

補助簿に分類される帳簿類は以下の通りです。

帳簿の種類	概要	具体的に書くべき内容
現金出納（すいとう）帳	現金でのやり取りを記録	・日付・勘定科目・摘要（詳細な内容）・金額・差引残高
預金出納帳	銀行口座でのやり取りを記録	・日付・勘定科目・摘要（詳細な内容）・引き落とし・入金額・差引残高
売掛帳	取引先ごとに受け取るお金に関する内容を記録	・日付・商品・サービス内容・売上金額・入金額・差引残高 （入金時は増やし、受取時は減らす）
買掛帳	取引先ごとに支払うお金に関する内容を記録	・日付・商品・サービス内容・購入金額・支払い額・差引残高 （購入時は増やし、支払い時は減らす）
固定資産台帳	パソコンなど減価償却できる高額資産の取引を記録	・資産の名称・番号・資産の種類・区分・耐用年数・償却率（種類・区分により決まっている）・取得年月日・償却方法（個人事業主は主に定額法）・金額・毎年の償却額 など

なお補助簿は、全部作成しなければいけないわけではありません。自身の事業の内容に応じて、上記のうち何種類かを作るのが一般的です。

補助簿についても、会計ソフトでは取引の入力に合わせて自動作成されます。

フリーランスの帳簿付けに不可欠な知識

フリーランスが日常的に帳簿付けを行う場合、以下の知識は欠かせません。

青色申告と白色申告の違い

フリーランスが毎年行う確定申告には、大きく分けて青色申告と白色申告の2種類の方法があります。

青色申告は必要な帳簿が多い上に、帳簿付けも単式簿記または複雑な複式簿記で行うルールです。ただし最大65万円の特別控除を利用できる分、節税効果が大きいメリットがあります。

一方、白色申告は節税効果はないものの、必要な帳簿が少なく、簡単な単式簿記で行う方法です。

青色申告と白色申告の具体的な違いは、以下の表のようになります。

	白色申告	青色申告
		簡易簿記	複式簿記
事前の届け出	不要	必要	必要
必要な書類	・確定申告書	・確定申告書・青色申告決算書	・確定申告書・青色申告決算書・貸借対照表・損益計算書
必要な帳簿	補助簿	補助簿	主要簿・補助簿
書類の保存期間	収入や経費に関するもの：7年 上記以外の帳簿：5年	収入や経費に関するもの：7年 上記以外の帳簿：5年	帳簿類：7年 貸借対照表など決算関係書類：7年 領収証など現金関係帳簿：原則7年 請求書など取引関係の書類：5年
所得の控除額	なし	最高10万円	最高65万円

単式簿記と複式簿記の違い

続いて重要なのが、単式簿記と複式簿記の違いです。

単式簿記は「簡易簿記」ともいい、年月日と金額の増減、増減の理由（勘定科目・摘要）だけを記します。例えば2024年8月20日に仕事に使うノートを500円で購入した場合、書き方は以下の通りです。

日付	勘定科目	金額	摘要
2024/8/20	消耗品代	500円	ノート代

一方複式簿記では、1つの取引を貸方（払った側）と借方（お金をもらった側）に分けて書きます。上記のノートを購入する例で複式簿記で記録した場合、以下の通りです。

日付	貸方	借方	摘要
2024/8/20	消耗品代500円	現金500円	ノート代

単式簿記の場合と異なり、貸方・借方両方の立場で勘定科目を記します。

発生主義と現金主義

フリーランスが帳簿付けする場合、発生主義と現金主義も知っておきたいポイントです。

発生主義とは、売上や支払いなどの取引が発生した時点で計上する方法を指します。例えば2024年8月20日に10万円の売上が確定し、9月10日に入金される予定の場合、取引が確定した8月20日のものとして記録するルールです。

一方現金主義では取引が確定した時点ではなく、実際にお金のやり取りをした時点で記録します。上の例であれば9月10日の取引として帳簿を付ける方法です。

フリーランスの帳簿付けは、原則として発生主義に基づいて行います。なお、売上の確定から入金まで年をまたぐ場合は12月分として書き残すのが決まりです。誤って1月分として計上すると、確定申告で計上する額も異なってきます。

電子帳簿保存法

帳簿付けでは電子帳簿保存法についても理解しておきたいところです。電子帳簿保存法では、確定申告に使う帳簿類（レシートなども含む）や決算書類をデータ保存することが認められています。

データ保存するには一定の条件を満たしている必要はあるものの、何かとかさばりがちな紙媒体での保存に比べると簡単に保存できるのがメリットです。

【初心者もOK】帳簿付けの基本的なステップ

フリーランスにとって帳簿付けは日常的に行わなければいけない分、以下の基本的な流れに慣れれば楽にできます。

領収書やレシートなどを保存する

まずは、日頃の取引で発行したりもらったりした領収書やレシートを保存しましょう。保存用のファイルを準備した上で、月別に仕分け・管理するのがおすすめです。

できれば日付順に並べておくと、後から簡単に帳簿付けできます。

こまめに取引記録を残す

続いてこまめに取引の記録を残しましょう。最低でも毎月に1度、可能であれば週に1度帳簿付けで処理するのが理想的です。

書き残した取引の内容は確定申告の書類作りで利用するため、まめに帳簿付けしておけば申告作業の際に慌てずに済みます。

確定申告書や決算書の作成

毎年春の確定申告の時期が近付いたら、確定申告書や決算書の作成です。申告方法に応じて必要な決算書の種類が異なるため、特に初めての方は事前に確認しておきましょう。

会計ソフトを使う場合は、登録した取引内容が直接申告書類に転記されるため、比較的楽な作成が可能です。一方エクセルや手書きの場合は、自分で取引記録から確定申告書や決算書類に転記します。

確定申告書などが完成したら、申告の期限日までに税務署に電子申告や郵送しましょう。

帳簿付けを楽に済ませるポイント4つ

普段多忙なフリーランスが帳簿付けを楽に済ませられる方法が、以下の4つです。

【超重要】こまめに帳簿付けする

まずこまめに帳簿を付けることが重要になります。フリーランスは普段の仕事に加えて、案件探し・自身のポートフォリオの作成・クライアントへの対応などと多忙です。

あまりにも多忙な場合、帳簿付けのような会計業務を後回しにすることもよくあります。ただ後回しにし過ぎた結果、確定申告前に1年分の帳簿を付けるのは大変です。

少しでも空いている時間にまめに帳簿をつける習慣を作れば、後から苦労しません。加えて早いうちに帳簿を付ければ、取引の内容について記憶があるうちに会計処理できます。

手書きよりも会計ソフト・アプリを活用する

また帳簿を付けるのであれば、手書きよりも会計ソフト・アプリの活用がおすすめです。会計ソフト・アプリは取引を記録するだけで、他の帳簿や確定申告に必要な書類に自動反映されます。簡単なステップで登録できるため、手間もほとんど掛かりません。

特にアプリ版の場合は、カメラ機能で取引を記録できて便利です。自宅だけでなく外出先でも簡単に登録できるため、取引についてしっかり覚えているうちに帳簿付けできます。

エクセルの場合はテンプレートを使う

会計ソフトのお金を節約する意味でエクセルを使いたい場合、テンプレートの利用がおすすめです。テンプレートはすでに作成された状態で無料ダウンロードできるため、1から作らずにすぐ使えます。

後は自分で項目などをアレンジすれば、自身の事業に合わせて使えて便利です。

クレジットカードや口座は事業用を準備する

他にも事業用のクレジットカードや銀行口座を準備すると帳簿付けが楽になります。事業用のカードや口座を会計ソフトと紐づけておくと、取引記録が自動で反映されるためです。プライベート用で決済する場合と異なり、わざわざ履歴をチェックして事業用の記録を探す必要もありません。

取引記録が定期的に送信されたら、あとは会計ソフト上で勘定科目や金額を確認して登録するだけで終わります。

帳簿付けにおすすめなツール

フリーランスにおすすめの帳簿付けツールは以下の4つです。

freee会計

参考：freee会計公式サイト

freee会計は個人事業主向けの会計ソフトでも代表的な存在として知られています。アプリ版であればレシート撮影機能やマイナンバーカードによる確定申告機能もあるため、好きなタイミングで使えて便利です。

帳簿付けでもレシートなどを参考にしながら、日付・勘定科目を選んだり金額を入力したりするだけで簡単に登録できます。

対応OS	Windows・Mac・Android・iOS
料金・プラン（税込・2ヶ月目以降）	スタータープラン：1,628円/月・12,936円/年（月換算1,078円）スタンダードプラン：2,948円/月・26,136円/年（月換算2,178円）プレミアムプラン：39,800円/年（月換算3,316円）
無料トライアル期間	30日
主な機能	レシート撮影機能（アプリ版のみ）取引入力機能銀行口座やクレジットカードとの連携機能請求書や領収書の整理・管理機能各種レポート機能確定申告の書類作成・提出機能 など
サポート体制	電話・メール・チャット
運営会社	freee株式会社

やよいの青色申告オンライン・白色申告オンライン

参照：やよいの青色申告オンライン公式サイト

やよいの青色申告オンライン・白色申告オンラインは、古くから会計ソフト業界で名を馳せている弥生が提供するサービスです。無料で使える期間が1年間と他の会計ソフトよりもずっと長いため、長期的に試すことができます。

機能面でも取引入力機能や口座・クレジットカードとの連携機能、確定申告機能などが一通り揃っていて便利です。帳簿付けも日付と金額を入力するだけですぐに完了するようになっています。

対応OS	Windows・Mac・Android・iOS
料金・プラン（税込・2年目以降）	セルフプラン：30,580円/年（月換算：2,548円）ベーシックプラン：41,360円/年（月換算：3,447円）
無料トライアル期間	1年
主な機能	レシート撮影機能（アプリ版のみ）取引入力機能銀行口座やクレジットカードとの連携機能請求書や領収書の整理・管理機能各種レポート機能確定申告の書類作成・提出機能 など
サポート体制	電話・メール・チャット
運営会社	弥生株式会社

マネーフォワードクラウド確定申告

参照：マネーフォワードクラウド確定申告公式サイト

マネーフォワードクラウド確定申告も、不動の人気を誇る会計ソフトです。ソフトやアプリ1つで帳簿付けから確定申告、経営レポートの確認までできます。

加えて独自の機能として家計簿の「マネーフォワードME」との連携機能もあるため、プライベートの取引の中の経費データも取り込み可能です。

対応OS	Windows・Mac・Android・iOS
料金・プラン（税込・2ヶ月目以降）	パーソナルミニプラン：1,408円/月、11,968円/年（月換算：990円）パーソナルプラン：1,848円/月、16,896円/年（月換算：1,408円）パーソナルプラスプラン：39,336円/年（月換算：3,278円）
無料トライアル期間	30日
主な機能	レシート撮影機能（アプリ版のみ）取引入力機能銀行口座やクレジットカードとの連携機能請求書や領収書の整理・管理機能各種レポート機能確定申告の書類作成・提出機能家計簿アプリ（マネーフォワードME）との連携機能 など
サポート体制	電話・メール・チャット
運営会社	株式会社マネーフォワード

各会計ソフトのエクセル向けテンプレート集

各会計ソフトにはエクセル向けのテンプレート集も用意されています。会計ソフトの公式サイト上で無料でダウンロードできるため、料金の心配はありません。

総勘定元帳や現金出納帳など帳簿の種類別に用意されているため、ダウンロードしたいものを好きに選べる点もメリットです。各テンプレートにはすでに項目や表が入力されている状態である分、自分で日付や数字などを入力するだけで使えます。

帳簿付けの注意点3つ

フリーランスが日常的に帳簿付けする場合、以下の3点に注意しましょう。

帳簿付けしないとペナルティの可能性も

まずフリーランスは、原則帳簿付けが義務付けられています。確定申告の方法別に必要とされる帳簿の種類も決まっているため、日頃から帳簿を作っておくのが無難です。

帳簿付けしなかった場合、過少申告加算税や無申告加算税が発生します。納めるべき所得税に加算されるため、余計な出費を抑える意味でも帳簿付けは大切です。

青色申告は事前の承認申請が必要

また確定申告を青色申告で行う場合、事前に税務署に届け出る必要があります。開業届を提出した状態で、「青色申告承認申請書」を提出しなければいけません。青色申告承認申請書は内容に不備がなければ、提出した時点で青色申告が認められます。

ただし毎年期限に間に合うように確定申告しないと、特別控除額を減らされる点に注意が必要です。加えて2年連続で期限に間に合わなかった場合、青色申告の承認自体が取り消されるため、余裕を持って申告作業を行いましょう。

電子帳簿は紙媒体での保存はNG

帳簿類を電子データとして保存する場合、紙媒体での保存は禁止です。電子帳簿保存法によって電子帳簿はデータのまま保存することが決まっています。

誤って紙媒体で保存するとペナルティが発生するため、電子帳簿はデータのまま保管することを心掛けてください。

まとめ

フリーランスにとって帳簿付けは、事業を運営し続ける限りずっと行っていくものです。必要な帳簿や確定申告の方法などを知った上で場数を重ねていけば、心配なく帳簿を付けていけます。

本記事で触れた帳簿付けの仕組みや方法を、ぜひ今後のフリーランス活動にお役立てください。