アイトリガー編集部
信頼できるデジタルマーケティングパートナーとして、クライアントとともに成長していくことを行動指針として活動する、プロフェッショナルなマーケター集団。実戦で得た経験をもとに、リアルな打ち手と課題解決のヒントをお届けします。
目次
多くのIT企業やクラウドサービス企業が、事業の初期段階でWeb広告に力を入れて一定の成果を上げてきました。
しかし、成長期に入ると「広告予算を増やしても商談が増えない」「顧客獲得にかかる費用が上がり続ける」といった課題に直面します。
これは単なる「広告予算の不足」ではなく、複数のマーケティング施策を組み合わせる設計がないこと、そしてどこに力を入れるべきか優先順位がつけられていないことが本当の原因です。
本記事では、広告だけに頼る状態から抜け出すための予算と人員の配分方法、社内でやるべきことと外部に任せるべきことの切り分け方、そして90日以内に成果を出す実行計画を解説します。
実際の事例とフレームワークを交えながら、マーケティング責任者が「すぐに経営陣へ説明できる戦略資料」を手に入れるための実践的なガイドをお届けします。
広告は短期的に成果を上げやすい反面、競合の増加や入札価格の高騰によって**費用対効果(投資に対する成果の割合)**は下がり続けます。
特にクラウドサービスのように顧客獲得費用が経営の健全性に直結するビジネスモデルでは、広告に頼るほど獲得費用が上がり、顧客から得られる売上総額とのバランスが崩れるリスクが高まります。
「広告費を2倍にしたのに商談候補は1.2倍しか増えなかった」という声は典型的な例であり、この段階で複数の集客経路を育てなければ、成長は確実に頭打ちします。
広告以外の施策――例えばSEO(検索エンジン最適化)、オンラインセミナー、お客様の成功事例紹介などは、中長期的に効果を発揮する資産型の集客経路です。
しかし「短期成果を優先するあまり後回しにされる」傾向が強く、結果的に広告以外の基盤が育たないまま負のループに陥ります。
特に検索対策やイベントは、立ち上げに数ヶ月以上を要するため「始めない限り永遠に成果が出ない」領域です。
広告に頼っている間に、中長期施策を育てられないまま時間だけが過ぎるという状況は、多くの成長期企業に共通する落とし穴です。
予算と人員の配分判断が場当たり的だと、「全部やる病」に陥りやすくなります。
広告・検索対策・セミナー・展示会など、すべてに手を出しても、優先順位がないために成果が分散し、どの施策も中途半端に終わる結果を招きます。
さらに、社内で戦略設計を担える人材がいないと、代理店任せの運用に流れやすく、「何に投資しているのか」「どの指標で成功とするのか」が曖昧になります。
これが、広告依存から脱却できない最大の要因といえるでしょう。
広告だけに頼る状態から脱却するためには、思いつきで新しい施策を試すのではなく、事業計画から逆算した設計が必要です。
年間売上目標や商談候補数などの目標に直結する数値を起点にすることで、優先度の高い施策と投資すべき予算・人員配分が明確になります。
まずは最終目標となる事業数値(例:年間売上10億円、月間商談候補3億円など)から逆算します。
こうした逆算を行うことで「今期あと500件のマーケティング見込み客が必要、そのうち200件は広告、300件は検索対策とセミナーで補う」というように数値ベースでの施策計画を描けます。
複数の施策を組み合わせる際には、施策ごとの特性を明確に理解することが欠かせません。
このように施策ごとの強みと弱みを整理することで、「短期と中長期の両立」「即効性と資産性のバランス」を取る判断がしやすくなります。
感覚的な判断ではなく、予算表と稼働表を使って配分を数値化することが重要です。
このように「施策別の投資額・作業時間・期待見込み客数」を数値化し、事業計画に連動した予算配分表を作ることで、経営層への説明も格段にしやすくなります。
複数の施策を描けたとしても、すべてを同時に実行するのは現実的ではありません。
特に人材や予算が限られているIT企業やクラウドサービス企業では、「どの施策を先にやるか」「どこへの投資を止めるか」という意思決定こそが成果を左右します。
ここでは、優先順位をつけるための3つの判断軸を紹介します。
マーケティングでは「今すぐ成果を出す施策」と「時間はかかるが継続的に成果を生む施策」の両立が不可欠です。
四半期内に成果を出すためには短期施策が必須ですが、短期施策だけに依存すると次の四半期以降に再び同じ課題が繰り返されることになります。
自社の競争優位性を高める中核領域は社内で責任を持って担うべき領域です。
一方で、実行スピードや専門スキルが求められる周辺業務は外部委託をうまく活用することで効率化が可能です。
判断基準は「自社の競争力に直結するかどうか」。
この切り分けがあいまいだと、代理店や外注先に任せすぎてノウハウが社内に残らない、という事態を招きます。
施策ごとに「どれくらい自社の競争力に寄与するか」「いくらかかるか」「どれだけ早く成果が出るか」を3つの軸で比較すると、投資判断がシンプルになります。
この3軸を用いた比較表を経営層と共有すれば、社内の意思決定スピードが大幅に上がります。
予算と人員配分を考える上で重要なのは、「どの領域を社内で担い、どこを外部に委ねるか」という線引きです。
極端に「すべて自社でやる」あるいは「すべて外部に任せる」といった形ではなく、両者を組み合わせることが成果を最大化するための現実的なアプローチです。
事業戦略に直結する部分は、自社で責任を持つべき領域です。
たとえば、商談候補の計画や指標の逆算、施策配分の設計は、経営方針や顧客理解に基づく意思決定が求められます。
外部に任せることももちろん可能ですが、「事業の戦略を紐づいているのか」など、自社について詳しく理解した上で設計ができるパートナーを見極める必要があります。
一方で、広告運用や記事制作のように高い専門性や大量の作業が必要な領域は、外部委託を使うことで効率化できます。
これらの業務を社内で抱えると、戦略を描く人材が日々の実務に埋もれてしまう恐れがあります。
外部委託を活用し、社内の人員は戦略や意思決定に集中させるのが理想です。
最近では「戦略だけを外部に任せ、実行は社内で行う」という組み合わせ型も増えています。
短期間で正しい方向性を得つつ、長期的には自社の力を育てられる点が大きなメリットといえるでしょう。
広告中心からの脱却は一朝一夕では実現できません。
しかし、スケジュールを設けて計画的に進めれば、経営層にも説明できる改善プロセスを描けます。
ここでは、1ヶ月ごとのステップを解説します。
最初の1ヶ月は「把握と計画」に集中します。
既存の施策ごとの見込み客獲得数、マーケティング見込み客から商談化への転換率、契約率などを整理し、商談候補目標や年間売上改善目標から逆算して指標を設定します。
この時点で広告比率の高さや他施策の不在を可視化することで、改善すべきポイントが明確になります。
次のステップは「設計と準備」です。
1ヶ月目で明らかになった課題をもとに、検索対策やセミナー、コンテンツ作成への予算・人員配分を再設計します。
社内で手が回らない領域は外部パートナーを導入し、記事制作や広告運用などを並行稼働させます。
この段階で「社内実施と外部委託の切り分け」を明確にしておくと、属人化や成果不明確化を防げます。
最後の1ヶ月は「実行と改善」にフォーカスします。
新しく導入した施策(検索対策・セミナーなど)が稼働し始めるので、週次レビューで見込み客数や商談候補進捗を追跡します。
改善余地がある施策は早めに修正し、成果が出始めた施策には追加投資を検討。
こうして四半期の終わりに、次期計画につながる明確な成果とデータを経営層に提示できる状態を整えます。
広告中心からの脱却を成功させるには、外部委託パートナーを「どう選ぶか」が大きな分かれ道になります。
費用の安さや知名度だけで決めてしまうと、成果が出ないまま時間と予算を浪費してしまうリスクがあります。
ここでは、必ず押さえるべきポイントを整理します。
依頼内容が曖昧だと、成果物の品質や責任範囲が不明確になりがちです。
指標ツリー、施策配分表、見込み客数の目標など、数値や形式で「何を受け取るか」を契約前に明確にしましょう。
こうすることで、進行中の齟齬や「やってみたけど成果が測れない」といった事態を防げます。
外部委託はスピードと専門性を補う一方で、「ノウハウが社内に残らない」リスクも伴います。
そのため、レポート・管理画面・手順書などを必ず成果物に含め、定例ミーティングや教育セッションを通じてノウハウを移転してもらうことが重要です。
これにより、契約終了後も社内で再現できる体制が整います。
成果が見えない状態を避けるためには、定例レビューの仕組みが欠かせません。
週次または隔週で成果数値(例:マーケティング見込み客数、獲得単価、商談候補進捗)を確認し、改善アクションを合意していきます。
これにより「代理店任せでよく分からない」という状態を防ぎ、パートナーを”伴走者”として活用できます。
広告だけに頼って成長が鈍化する原因は、「人材不足」そのものではなく、正しい予算・人員配分と施策設計が欠けていることにあります。
戦略を描ける人材がいない、外部委託の評価基準が曖昧、といった状態では四半期ごとの成果責任を果たすのは困難です。
しかし、事業計画から逆算した複数施策の組み合わせ設計を行い、外部委託を正しく活用すれば状況は大きく改善できます。
社内で担うべき領域と外部に任せる領域を整理し、90日単位の実行計画を描くことで、経営層にも説明可能な改善シナリオを提示できます。
改善可能な道筋を持てることが、マーケティング責任者にとって最大の安心材料です。
本記事で紹介したフレームとチェックリストを自社に当てはめ、まずは小さな一歩を踏み出してみてください。

記事を書いた人
アイトリガー編集部
信頼できるデジタルマーケティングパートナーとして、クライアントとともに成長していくことを行動指針として活動する、プロフェッショナルなマーケター集団。実戦で得た経験をもとに、リアルな打ち手と課題解決のヒントをお届けします。
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