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フリーランスは家賃を経費計上できる?按分計算から節税の方法まで具体的な事例にあわせて紹介
フリーランスや個人事業主の中には自宅で作業する人も大勢います。住んでいる家で支払う家賃や住宅ローンを経費にできればと思う方もいるでしょう。
実は家賃などは一定のルールに基づいていれば経費として計上できます。もし経費に計上できれば、確定申告でも税金が安くなるため便利です。今回はフリーランスや個人事業主が家賃を経費にできるかについて、方法や具体例とともに解説します。
目次
【結論】フリーランスや個人事業主は家賃を経費にできる!
日頃から自宅で仕事に励むフリーランスや個人事業主の場合、家賃を経費にできます。自宅を事務所として使う場合、自宅は仕事を進める上で必要な作業場所であるためです。なお事務所やシェアオフィスなどで作業する場合でも、家賃を経費として計上できます。
ただし、経費にできるのは家賃の一部です。また経費にする際、様々なルールがあるため、しっかり理解してからご活用ください。
フリーランスや個人事業主が家賃を経費にできるケース
フリーランスや個人事業主が家賃を経費にする場合、できるケースがいくつかあります。具体的には以下の4つです。
【ワンルームなど】普段自宅を仕事場に使っている
まず、普段自宅を仕事場に使っている場合が挙げられます。自宅の間取りのうち仕事に使っている部分であれば、経費にしても問題ありません。自宅は生活の場でもある分、生活に使われる部分は除外して計算する決まりです。
後で解説しますが、自宅の間取りのうち仕事用に使う分を計算して割合を出します。または1日のうち自宅で仕事する時間の割合を出す手も一般的です。これらの割合を出した後に家賃に掛けて、最終的に経費にする分を算出します。ちなみにただ住んでいるだけの場合は、経費として扱えません。
自宅以外に事務所やシェアオフィスを借りている
次に、自宅以外に事務所やシェアオフィスを借りている場合も家賃を経費にできます。ただし、ここでいう「家賃」は事務所などの賃料です。
事務所を仕事専用に使っている場合であれば、賃料の全額を計上できます。なお、事務所で仕事する代わりに自宅で全く仕事しない場合は、自宅の家賃は経費にはできません。
自宅と事務所の両方で仕事している
さらに自宅と事務所の両方で仕事する場合も、家賃や事務所の賃料を経費として扱えます。例えば基本事務所で仕事しつつ、当日中に終わらなかった業務を家で片付ける例などです。
この場合は事務所の賃料全額に、家賃も家で仕事した割合分が経費として認められます。仮に業務時間10時間のうち2時間を家で済ませると、家賃の2割が計上可能です。
ただし両方で仕事する場合、片方のみに比べ細かい計算が求められます。うまく計算できる自信がない場合は、税理士に相談するのもおすすめです。
また、事務所を借りる相手が同じ生計の親族であるかどうかも注意しましょう。親などと同じ家計で生活している場合、親などからスペースを借りても賃料は経費にできません。
毎年確定申告している
家賃を経費にして、その恩恵を受けたいのであれば確定申告は欠かせません。確定申告書に経費の一部として記載することで、税金が安くなります。
確定申告では、売上から経費などを除いた所得に基づいて所得税額を計算します。毎年きちんと確定申告することが、経費にした家賃を有効活用する手段です。
ただし、申告する際は経費を多く書くなど嘘を付いてはいけません。嘘が発覚すると、追加で課税されるだけでなく刑事罰に問われる恐れもあります。
フリーランスや個人事業主が家賃を経費にする方法
フリーランスや個人事業主が家賃を経費にできれば、税金を安くできます。家賃を経費にする方法は以下の通りです。
家事按分の考え方を活用
家賃を経費にするには、「家事按分(かじあんぶん)」の考え方を用います。家事按分とは自宅での仕事で発生した費用のうち、事業用の割合を算出することです。
自宅で仕事する場合、生活費と事業用の経費が混じることはよくあります。確定申告で経費を計上する際も、事業に使った費用のみを記載します。このため家賃を家事按分する場合も、事業で使った分の割合を出すことが欠かせません。
家賃を経費にできる割合の目安は3~4割程度
フリーランスや個人事業主が家賃を経費にできる割合の目安は、3~4割程度が一般的です。例えば自宅の家賃が8万円であれば、2万4,000円から3万2,000円を経費に計上できます。
この3~4割はあくまでも目安です。もし自宅と自宅外で仕事はするが、外で仕事することが多い時は割合を下げられます。逆に自宅スペースの多くを使ったり、長時間家で働いたりする場合は割合を上げてもOKです。
家事按分を計算する方法
それでは具体的に家事按分を計算する方法も解説します。家事按分は仕事に使う面積か、実際の作業時間に基づいて計算するのが一般的です。
仕事に使う面積から計算する
まず面積から計算する場合、自宅の間取りのうち仕事に使う分の割合を算出します。例えば自宅の間取りが40㎡で、そのうち仕事場所の広さが10㎡の場合、10÷40=25%です。
割合が算出できたら、続けて自宅の家賃と掛け算します。もし家賃が20万円の場合は、20万円×25%(0.25)=5万円です。これで家賃のうち5万円を経費にできます。
仕事に使う時間で計算する
一方時間で計算する場合は、1日(24時間)のうち何時間程度自宅で仕事するのかを割り出す方法です。例えば自宅で作業する時間が1日10時間の場合、10時間÷24時間=約42%です。
割合が出たら、面積から計算する場合と同様に家賃と掛け算しましょう。家賃が20万円の場合、先程の割合を掛けると20万円×0.42で8万4,000円です。これで8万4,000円を経費として計上します。
家事按分の割合は自由に決められる
家事按分の割合は、実は自分で自由に決められる仕組みです。税金関係の法律でも、特別「この割合にしなさい」と書かれた条文はありません。
とはいえ、「自分で自由に決めて良い」と言われるとどの程度にするかに悩みますよね。もし割合で悩む場合は、先程紹介した3~4割の目安を基準にすると良いでしょう。
家事按分の根拠・証拠を残しておくのがおすすめ
家事按分は比較的自由に決められますが、何らかの根拠をもとに決めるのがおすすめです。思い付きで8割などの高い割合に設定した場合、税務署から怪しまれます。場合によっては税務調査の対象にもなりかねません。
家事按分を決める際の根拠となるのが、計算方法でも説明した仕事に使う面積や時間です。例えば面積で決める場合は、自宅と仕事用スペースの比率を明確にすると良いでしょう。間取り図や計算式を書いたメモのような物的証拠を提示できれば、より万全です。
家賃の勘定科目は「地代家賃」
経費にした家賃を節税に活かすには、会計ソフトや確定申告書への記帳が欠かせません。家賃を経費として記録する場合、勘定科目として「地代家賃」を使います。
なお「勘定科目」とは、事業に関係する収入や費用を表す分類のことです。収入関係では「売上」が、支出関係では「会議費」や「消耗品費」などが使われます。
確定申告では確定申告書とともに提出する決算書には、「地代家賃」の欄があります。実は地代家賃の欄が書いてあって、初めて経費として認められる仕組みです。会計ソフトで月々の家賃を入力しつつ家事按分の比率を設定しておけば、自動で反映されます。
住宅の名義が別でも経費にできる
住宅の名義が自分のものではない場合でも、家賃を経費にすることは可能です。例えば夫の名義で借りた自宅で妻が仕事する場合でも、妻の経費として申告できます。夫が家賃を支払うものの、法律では夫婦は同一の生計とみなされるため、問題はありません。
また家族と生計が別の人が親族名義の物件を借りて事務所にする場合も、家賃を経費にできます。例えば父親名義の物件で賃料を払って使う場合、その賃料を経費申告できる形です。なお家族と生計が同じ場合は、賃料を経費にできません。
家賃以外で経費にできるもの5つ
自宅で仕事する場合、実は家賃以外に経費にできる費用があります。以下の費用を払っている場合は、ぜひ経費にすることを考えてみてください。
水道光熱費
水道代やガス代など水道光熱費は、家や借りた事務所で水やガスなどを使う場合に経費にできます。水道やガスについては、例えば自宅で作った弁当を販売する場合であれば申告が可能です。なお料理と関係のない職種でも、冬にガスストーブを使う際はガス代を経費として扱えます。
一方電気については、フリーランスも仕事用のパソコンの充電などに使うケースが多いです。このため自宅や事務所の電気料金は経費にできる余地が十分あります。
通信費
次に通信費も経費にできる項目です。仕事の一環でパソコンやスマホを使ってネット検索や電話連絡する場合などに適用できます。スマホでの連絡やリサーチの多い職種であれば、確実に経費にできるでしょう。
なお複数の機器を使う場合は、機器別に仕事でネットを使う時間の割合を算出します。もし計算が面倒な場合は、いっそのこと事業用のスマホなどを選んでおくのがおすすめです。仕事中に事業専用で使えば、その機器の通信費を丸ごと経費にできます。
駐車場代・車両代など車関連の費用
遠くへの取材などのように仕事で車を使う場合は、駐車場代や車両代も経費にしてOKです。駐車場代は仕事と生活で同じ車を使う場合、家事按分で事業用の割合のみを計上します。もし車を事業用にしか使わない場合は、駐車場代を丸ごと経費にして問題ありません。なお、ガソリン代や車検費用なども同様の方法で計上できます。
駐車場代やガソリン代の家事按分は、普段の走行距離に基づいて計算するのがおすすめです。例えば月の走行距離が500㎞、仕事での移動が100㎞の場合は、2割分を経費とします。
一方車両代については、減価償却を用いて家事按分していきます。減価償却とは、事業に使う高価な資産(機械・設備など)の価値を耐用年数で分ける方法です。年々経年劣化で価値が下がることを踏まえて、毎年少しずつ経費にします。
住宅ローンの利子
自宅が持ち家で住宅ローンを返済している場合は、その利子も経費にすることが可能です。ちなみに元本は計上できないため、注意してください。
また自宅の床面積のうち事業で使用する割合が50%以下にすれば、住宅ローン控除も受けられます。ただし住宅ローン控除を全額分受けたい場合は、事業用の割合を10%以内に抑えなければいけません。また住宅ローン控除は、返済期間が残り10年を下回ると受けられなくなります。
自宅の中で事業に使う分を上手くやりくりすれば、住宅ローン控除と経費とで二重にお金を抑えられます。
社宅の家賃
もし従業員のために社宅を用意した場合、社宅の家賃も経費にすることが可能です。ここでいう「家賃」とは、具体的に従業員が支払うものだけを指します。
加えて個人事業主が社宅を用意する場合、まずは本人が建物の所有者から借りる仕組みです。その後個人事業主が社員に貸し、彼らから徴収した賃料が経費となります。なお社員にタダで貸すと、今度は社員の給料から課税されてしまう点にご注意ください。
フリーランスや個人事業主が家賃を経費する際の注意点4つ
フリーランスや個人事業主が家賃を経費にする際、いくつか注意するべき点もあります。以下の4つもぜひ意識してください。
家事按分の割合は高くしすぎない
まず家事按分の割合を高くしすぎてはいけません。フリーランスの家事按分の割合は、3~4割程度が妥当とされています。家で長時間仕事する場合などは5~6割もあり得るでしょう。
しかし8割や10割と高すぎる数字は現実的ではありません。もし毎年のように高すぎる割合を計上すると、税務署にマークされてしまいます。不正が発覚した場合、払うべき税金のほか、ペナルティで支払う分まで求められます。
正当な理由なく割合を高くしすぎるとしっぺ返しを食らうため、避けるべきです。
家事按分の割合はむやみに変えない
また家事按分の割合をむやみに変えることもおすすめできません。確かに家事按分の割合は都合に応じて自由に変えられます。
しかしあまりにも高い頻度で変えていると、税務署から思い付きで操作していると思われてしまいます。高い割合で計上する場合と同様、税務調査の対象になる恐れもあるため、なるべく避けてください。
ただし家の中で使えるスペースに変更があるなどのように、割合を変えなければいけない場合もあります。その際は改めて面積や作業時間に基づいて計算し直すべきです。
青色申告と白色申告では家事按分のルールが異なる
確定申告には大きく青色申告と白色申告がありますが、それぞれで家事按分のルールが異なります。青色申告の場合は、所得税法96条2項に基づいたルールが一般的です。
所得税法96条2項
「前号に掲げるもののほか、青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者に係る家事上の経費に関連する経費のうち、取引の記録等に基づいて、不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務の遂行上直接必要であつたことが明らかにされる部分の金額に相当する経費」
つまり、仕事で必要であることを明確な根拠で証明できる費用が経費にできるというものです。家賃もきちんとした計算式で出された適切な割合であれば、経費にできます。
一方白色申告の場合は、所得税法96条1項に基づきます。
所得税法96条1項
「家事上の経費に関連する経費の主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる場合における当該部分に相当する経費」
白色申告については、仕事中に払った費用が直接必要だったことを示すだけでは不十分です。その費用がどのような理由で経費になるのかという根拠も求められます。国税庁の解釈でも、払った費用のうち業務に関係する部分が50%を超えるかどうかが基準です。
ただし以上の違いは、あくまでも法律上のものにすぎません。実際には申告の種類や割合に関係なく、仕事で必要だった根拠を示すルールです。
礼金は経費にできるが敷金はNG
賃貸で住宅を借りる場合、敷金や礼金を経費にできるかを知っておくことも大切です。実は礼金は経費にできる一方、敷金は経費にできません。
礼金と敷金とで扱いが異なるのは、それぞれの目的が別々であるためです。礼金は家を貸す大家への謝礼代わりに渡す金銭で、一度払えば戻っては来ません。一方敷金は借りている間に大家や管理会社に預けるお金で、基本退去時に戻ってきます。
敷金はいずれ戻ってくるお金である分、「払った」とはみなされません。このため敷金は経費にできない仕組みです。
【経験談】筆者は普段家賃をどのように経費にしているか
ここまで家賃を経費として計上する方法を解説してきました。ただ、具体的な実例があればより家賃を経費にする方法を理解できるでしょう。最後に現役のフリーランスである筆者が普段実践している方法をご紹介します。
筆者の家賃関連の情報
まず筆者の家賃関連の基本的な情報は、以下の通りです。
- 筆者のフリーランス歴:2024年2月末現在で7年1ヶ月
- 自宅(アパート)の間取り:6畳+キッチン(2畳)
- 作業場所:自宅(アパート)のほか、カフェやコワーキングスペース
→自宅以外で仕事する割合が非常に高い - 自宅内での作業場所:リビングの真ん中
- 筆者の住んでいるアパートの家賃(月額):2万8,000円
- 筆者が普段仕事する時間・日数:8:00~20:00のうち9時間/週6日
筆者の家事按分の方法
筆者は仕事をする日は、毎日8:00~20:00のうち休憩時間を除いた9時間程度です。日にもよりますが、この9時間のうち概ね2時間は自宅で作業しています。
このため、家事按分は基本的に時間に基づいて計算しています。計算式は以下の通りです。
2時間÷9時間=0.2222→約22%
これだけであれば、家事按分を切りよく2割で計上するところです。ただ筆者の場合はリビングの真ん中で作業しています。自宅のスペース全てを使っていない点を考慮し、半分の1割を家事按分としているところです。このため、家賃28,000円のうち1割の2,800円を、毎月経費にしています。
確定申告の際は、クラウド会計ソフト「freee」で家事按分割合を設定しています。確定申告の「収支」ページの「家事按分」で、事業用の比率を10%に設定する方法です。あとは1年間で払った家賃の金額(年によって更新費用含む)を入力します。すると、経費として申告される金額が算出される仕組みです。
筆者が自宅関連で家賃以外で経費にしているもの
なお、筆者は家賃以外にガス代や電気料金も経費にしています。自宅での作業中に空調を使ったりパソコンを充電したりすることがあるためです。
一方でインターネットに使う通信費は経費にしていません。アパートでインターネットが無料で使える上、外でも無料Wi-Fiを利用するためです。加えて車両代や駐車場代については車がないため、こちらもカウントしていません。
まとめ
フリーランスや個人事業主が家賃を経費にできるかどうかについて見てきました。家事按分で決めた割合で算出した額を経費にできる決まりです。ちなみに家賃以外に、水道光熱費や通信費なども一部経費にできます。
確定申告で家賃などを経費計上するには、様々なルールを守ることが欠かせません。確定申告の際は今回の内容を振り返っていただければ幸いです。
記事を書いた人