アイトリガー編集部
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目次
近年、中小企業や小規模事業者の間で補助金・助成金がブームになっています。しかし、これまで補助金・助成金の申請経験がなく、一体何から手を付けたらいいのかわからないという経営者もたくさんいます。本稿では、中小企業診断士の私がそうした経営者が補助金・助成金の概要を理解できるようにしました。本稿を読むことにより、会社にとって最適な補助金や助成金を受給できるようになります。
この記事でわかること
実は補助金、助成金について、正式な定義はありません。
中小企業診断士や社会保険労務士など士業の世界では、経済産業省所管のものを補助金、厚生労働省所管のものを助成金としています。したがって、補助金と助成金の最大の違いは所管官庁の違いです。経済産業省、厚生労働省以外の省庁や地方自治体などの補助金・助成金もありますが、それらの名称の付け方に決まったルールはないので本稿では触れません。
経済産業省の補助金は、ポストコロナ、ウイズコロナの時代の経済社会の変化への対応といった国の政策目標を推進するために実施されています。予算が限られていて、定員も設定されており、国の政策目標に合致した事業を推進できる事業者の事業計画のみが採択されます。各種補助金の審査員に中小企業診断士が任命されるなど、経済産業省所管の中小企業診断士が深く関与しています。一方、厚生労働省の助成金は主に雇用関係や労働環境の改善に対して交付されます。対象者や対象活動などの基準を満たしていれば、ほぼ100%支給されます。申請期間も長期間に渡り、通年で募集されていることが多いため、受給しやすいといえます。助成金の代理申請が社会保険労務士の独占業務であるなど、厚生労働省所管の社会保険労務士が深く関与しています。関係する士業の違いも、補助金と助成金の違いです。
補助金、助成金の違いについて比較すると次のようになります。
総務省統計局が公表している労働力調査によると、完全失業率は2017年に3%を下回って以来、歴史的な低水準で推移しています。
総務省統計局『労働力調査』
また、厚生労働省が公表している一般職業紹介状況調査によると、有効求人倍率も令和2年に底を打ち、令和5年11月時点で1.32倍となっています。
厚生労働省『一般職業紹介状況調査』
人手不足、労働力不足は多くの企業が抱える問題です。賃金も上昇傾向にあるため、市場から労働力を調達することが難しくなっています。今後、企業を成長させるためには少ない労働力をいかに効率的に使うかが重要です。労働力の効率化の方法として、業務改善による仕事量の削減と教育訓練による効率的に動ける人材の育成が考えられます。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、中小企業・小規模事業者の生産性向上や持続的な賃上げに向けて、革新的な製品・サービスの開発や生産プロセス等の省力化に必要な設備投資・システム構築を支援する事業です。
次のような申請枠・類型があり、省力化(オーダーメイド)枠が業務改善に該当します。
(経済産業省『ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領』)
人手不足の解消に向けて、デジタル技術等を活用した専用設備の導入等により、革新的な生産プロセス・サービス提供方法の効率化・高度化を図る取り組みに必要な設備・システム投資等を支援します。
経済産業省所管の補助金なので助成金と違い審査があります。
なお、以下の要件を全て満たす必要があります。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金の申請フローは次のようになっています。
(経済産業省『ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領』)
小規模事業者持続化補助金(=持続化補助金)は、小規模事業者が自社の経営を見直し、自らが持続的な経営に向けた経営計画を作成した上で行う販路開拓や生産性向上の取り組みを支援する制度です。
小規模事業者等が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更等に対応するために取り組む販路開拓等の取り組みの経費の一部を補助することにより、地域の雇用や産業を支える小規模事業者等の生産性向上と持続的発展を図ることを目的とします。本補助金事業は、持続的な経営に向けた経営計画に基づく、販路開拓等の取り組みや、その取り組みと併せて行う業務効率化(生産性向上)の取り組みを支援するため、それに要する経費の一部を補助するものです(『小規模事業者持続化補助金公募要領』)。
販路開拓等の取り組みと併せて行う業務効率化(生産性向上)の取り組みが業務改善に該当します。
助成金と違い、経済産業省所管の補助金なので審査があります。
補助上限額は250万円、上限補助率は3/4となっています。
(経済産業省『小規模事業者持続化補助金ガイドブック』)
小規模事業者持続化補助金の申請フローは次のようになっています。
(経済産業省『小規模事業者持続化補助金 公募要領』)
業務改善助成金は、生産性向上とともに賃金引き上げに取り組む中小企業・小規模事業者を支援する制度です。業務改善助成金を受給するためには、設備投資などを実施し、事業場内最低賃金を引き上げる必要があります。
厚生労働省『業務改善助成金』ウェブページより
設備投資としては、生産性向上のための設備・機器の導入、国家資格者による経営コンサルティングの活用、人材育成に係る研修の実施などがあります。事業場内最低賃金の引き上げは、就業規則などに規定し、引き上げ後の賃金額を労働者に支払う必要があります。生産性向上の取組と最低賃金の引き上げを満たした場合に設備投資などにかかった費用の一部が助成されます。
設備投資などの実施
事業場内最低賃金を引上げ
支給対象は国内で事業を営む中小企業と個人事業主です。助成額は、生産性向上のための設備投資などにかかった費用に助成率を乗じて算出します。最大600万円支給されます。
(厚生労働省『雇用関係の「助成金」を活用してみませんか』リーフレット)
業務改善助成金の申請フローは次のようになっています。
(厚生労働省『業務改善助成金 申請マニュアル』)
人手不足、労働力不足により人材の採用・確保はますます厳しくなっています。したがって、従業員の労働生産性をいかに高めていくかが生き残りの鍵です。活用できる助成金として、人材開発支援助成金があります。
人材開発支援助成金は、事業主等が雇用する労働者に対して職務に関連した専門的な知識及び技能の習得をさせるための職業訓練等を計画に沿って実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です
厚生労働省所管の助成金なので補助金と違い、要件さえ満たしていれば支給されます。
人材開発支援助成金には、次の7コースがあります。
人材育成支援コース
人材育成支援コースは、職務に関連した知識・技能を習得させるための訓練を計画に沿って実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成します。
人材育成支援コースの要件は次のようになっています。
職務に関連した知識や技能を習得させるためのOFF JTを10時間以上行った場合に助成されます。
中核人材を育てるために実施するOJTとOFF JTを組み合わせた訓練を行った場合に助成されます。
有期契約労働者等の正社員転換を目的として実施するOJTとOFF JTを組み合わせた訓練を行った場合に助成されます。
教育訓練休暇等付与コース
教育訓練休暇等付与コースは、労働者の 自発的職業能力開発 を受ける機会の確保等を通じた職業能力開発および向上を促進することを目的としています。
次の3つの制度を対象とした助成を用意しています。
(厚生労働省『人材開発支援助成金のご案内』)
建設労働者認定訓練コース
建設労働者認定訓練コースは、建設業の中小事業主等が認定訓練を実施する、または建設業の中小事業主が建設労働者に有給で受講させる場合に助成されます。
建設労働者技能実習コース
建設労働者技能実習コースは、建設業の事業主等が建設労働者に有給で技能実習を受講させる場合に助成されます。
障害者職業能力開発コース
障害者職業能力開発コースは、障害者に対して職業能力開発訓練事業を実施する場合に助成されます。
訓練対象者は、次のいずれかに該当する者です。
人への投資促進コース(令和8年度まで)
人への投資促進コースは、「人への投資」を加速化するため、国民からの提案を形にした訓練コースです。次の5つの訓練を用意しています。
事業展開等リスキリング支援コース(令和8年度まで)
事業展開等リスキリング支援コースは、新規事業の立ち上げなどの事業展開に伴い、事業主が雇用する労働者に対して新たな分野で必要となる知識及び技能を習得させるための訓練を計画に沿って実施した場合等に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。
人材開発支援助成金の申請フローは次のようになっています。
(厚生労働省『人材開発支援助成金 人材育成支援コース』パンフレット)
(東北経済産業局『小規模事業者持続化補助金 採択事例集』)
(厚生労働省『業務改善助成金の活用例』リーフレット)
(厚生労働省『人材開発支援助成金活用例』)
補助金と助成金の違いは次のようになります。
補助金は経済産業省が所管し、中小企業診断士による審査を経て採択されます。
助成金は厚生労働省が所管し、代理申請は社会保険労務士の独占業務です。
多くの企業が抱えている人手不足、労働力不足の問題に対応するためには、労働力の効率化が重要です。労働力の効率化の方法として、業務改善による仕事量の削減と教育訓練による効率的に動ける人材の育成があります。
業務改善に使える補助金、助成金として、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金、小規模事業者持続化補助金、業務改善助成金などがあります。
人材育成に使える補助金、助成金として、人材開発支援助成金などがあります。
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